サイトのトラブルの中で、最も防ぎやすいのに、最も頻繁に起きるのが期限切れです。技術的な問題ではなく、純粋に管理の問題で発生します。そして被害は、サイトが見られなくなるだけでは終わりません。今回は、SSL証明書とドメインの期限切れで実際に何が起きるかを整理します。
SSL証明書が切れると何が起きるか
SSL証明書は、「https://」で始まる暗号化通信に必要な電子的な証明書です。有効期限があり、切れると次のようになります。
- ブラウザに全画面の警告が表示される(「この接続ではプライバシーが保護されません」)
- 訪問者は警告を解除しないとサイトを見られない
- ほとんどの人はそこで引き返す
- 問い合わせフォームも当然使えない
厄介なのは、サーバーもサイトも正常に動いている点です。管理者がパソコンで見て気づかず、取引先からの指摘で初めて発覚する、という流れが典型的です。
期限切れは障害ではなく、予定されていた出来事である。にもかかわらず、障害より被害が大きくなることがある。
ドメインが失効すると、もっと深刻
ドメインの期限切れは、SSLよりはるかに影響が大きくなります。
| 経過 | 状態 |
|---|---|
| 期限日を過ぎる | サイトとメールが停止する |
| 数週間(猶予期間) | 通常の更新料で復活できる |
| 猶予期間の後 | 高額な復旧料金が必要になる |
| その後 | 第三者が取得できる状態になる |
失ったドメインは、取り戻せる保証がありません。 第三者に取得された場合、まったく別のサイトが表示されることになり、名刺・パンフレット・登記情報に記載したURLがすべて使えなくなります。
さらに見落とされがちなのがメールです。独自ドメインのメールアドレスを使っている場合、ドメインが切れた瞬間に送受信が止まります。取引先からの連絡が届かず、しかも相手にはエラーすら返らないことがあります。
なぜ通知に気づけないのか
管理会社からは、期限の前に何度も通知メールが届きます。それでも気づけないのには理由があります。
1. 宛先が個人のアドレスになっている
登録時の担当者の個人アドレス宛に送られ続けている。その担当者が退職していれば、誰も読みません。
2. 迷惑メールに振り分けられている
更新を促すメールは、内容の性質上、迷惑メールと判定されやすい傾向があります。
3. 支払い方法が切れている
自動更新の設定はしてあるが、登録しているクレジットカードが有効期限切れになっている。決済が通らず、自動更新に失敗します。これが最も多いパターンです。
4. そもそも誰が契約しているか分からない
前の制作会社が代理で取得したまま、契約者情報が引き継がれていないケース。更新通知は制作会社に届いており、自社には何も届きません。
更新料そのものは高くない
念のため補足すると、ドメインの更新料は一般的なもので年間1,000円から数千円程度です。SSLも無料の選択肢があります。
つまり金額が理由で失効することはほぼなく、原因は例外なく管理の問題です。年間数千円の管理を怠ったために、ドメインを失い、URL変更と信用低下を招く。費用対効果として、これほど割に合わない事故はありません。
管理台帳を1枚作る
対策は技術ではなく、記録です。次の項目を1枚の表にまとめてください。
- ドメイン名
- 管理会社(お名前.com、ムームードメインなど)と管理画面のURL
- 契約者名義と、登録している連絡先メールアドレス
- 有効期限
- 支払い方法と、カードの有効期限
- 自動更新の設定状況
- SSL証明書の種類(無料か有料か)と有効期限
- サーバー契約の期限
- 社内の管理責任者
この表を作る過程で、「契約者が誰か分からない」「通知先が退職者のまま」といった問題が必ず見つかります。作ること自体が点検になります。
更新の仕組みを二重にする
台帳を作ったら、期限が来る前に気づける仕組みを重ねます。
- 支払い方法を自動更新にし、カードの有効期限も台帳で管理する
- 通知メールの宛先を、個人ではなく共有アドレスに変更する
- 期限の1か月前と1週間前に、カレンダーへ予定を登録する
- 可能であれば、ドメインの契約を複数年で取得する
特に複数年契約は有効です。年に一度の更新作業が数年に一度になるだけで、忘れる確率が下がります。
SSLは自動更新にできる
SSL証明書については、無料で自動更新できる選択肢があります。Let’s Encryptに対応したレンタルサーバーであれば、管理画面の設定ひとつで、期限を意識する必要がなくなります。
Cloudflareを経由させる構成でも、証明書の発行と更新が自動化されます。詳しくはクラウドフレアとは?無料でできる範囲で扱っています。有料証明書を手動更新し続けている場合は、切り替えを検討する価値があります。
なお、企業実在証明型(OV・EV)の証明書を使っている場合は、自動更新の対象外です。金融機関やECサイトなど、審査つきの証明書が必要な業態では、引き続き手動管理が必要になります。
期限が切れてしまったときの初動
すでに切れてしまった場合は、経過時間で対応が変わります。
SSLの場合は比較的単純で、再発行して設定すれば数十分から数時間で復旧します。無料証明書に切り替えるなら、その場で移行してしまうのが合理的です。
ドメインの場合は急を要します。
- 管理会社の管理画面にログインし、更新手続きが可能か確認する
- 猶予期間内であれば、通常料金で即座に更新する
- 猶予期間を過ぎている場合、復旧手続きの可否と費用を問い合わせる
- 復旧できない場合は、別ドメインへの移行を検討する
4番になった場合の損失は大きく、URLの変更、名刺の刷り直し、検索順位の再構築、取引先への連絡が必要になります。1日でも早く動くかどうかで結果が変わります。
期限切れは検索順位にも影響する
短期間で復旧すれば大きな問題にはなりませんが、停止が長引くと検索エンジンからの評価にも影響します。
クローラーが繰り返しアクセスして応答がない状態が続けば、検索結果から外れていきます。一度落ちた順位を戻すには、停止していた期間よりはるかに長い時間がかかります。
またSSLが切れている間は、ブラウザの警告によって直帰率が跳ね上がります。その期間のアクセスデータは分析に使えなくなるため、施策の評価にも影響します。
担当者の退職という盲点
期限切れの原因を追うと、最終的にここに行き着くことが多くあります。担当者が退職し、管理画面のIDとパスワード、契約者情報、通知の宛先がすべて不明になる。
引き継ぎの際は、サイトに関する契約情報を一覧で引き渡すことを手順に入れてください。作業のやり方より、契約の所在のほうが重要です。バックアップの手順書とあわせて1つにまとめておくと管理しやすくなります。手順書に含めるべき項目はバックアップは「取っただけ」では戻せないにまとめています。
まとめ
SSLとドメインの期限切れは、事前に分かっている出来事です。それでも起きるのは、通知が届かない、担当者がいない、カードが切れている、という管理側の理由がほとんどです。
台帳を1枚作り、通知先を共有アドレスにし、自動更新にできるものは自動化する。これだけで、ほぼ防げます。当スタジオの保守プランでは、SSLとドメインの更新通知の確認を含めて代行しています。ご相談はお問い合わせより承ります。