「文章は悪くないと思うんです。読みやすいし、内容もきちんと書いてある。それでも問い合わせが来ない」——サイトの原稿を拝見していて、実際にその通りだと感じることがあります。文章としては整っている。けれど行動させる文章にはなっていない。この2つは別物で、必要な技術も違います。今回はその違いを整理します。
ゴールが違えば、書き方も変わる
読ませる文章のゴールは「最後まで読んでもらうこと」です。対して行動させる文章のゴールは「読むのをやめて、動いてもらうこと」。極端に言えば、途中で納得して問い合わせボタンを押されたなら、その文章は最後まで読まれなくても成功です。
| 読ませる文章 | 行動させる文章 | |
|---|---|---|
| 目的 | 最後まで読ませる | 途中で動かせる |
| 評価指標 | 滞在時間・読了率 | 問い合わせ数・CVR |
| 主語 | 書き手(自社) | 読み手 |
| 情報の順序 | 起承転結 | 結論が先 |
| 表現 | 情緒・比喩 | 数字・固有名詞 |
読み手は文章を評価しに来ているのではない。自分の問題が解けるかどうかだけを見ている。
違い1:主語が「自社」ではなく「読み手」
最も多い問題がこれです。
- 読ませる文章:「当社は創業以来、品質にこだわり続けてまいりました」
- 行動させる文章:「不良品の再発対応に追われている工場の方へ」
前者は事実として正しく、文章としても問題ありません。しかし読み手にとっては自分の話ではないため、読む理由が生まれません。会社案内の原稿をそのままWebに載せると成果が出ないのは、主語が最後まで自社のままだからです。
書き終えたあと、文頭を指で追って「当社」「私たちは」で始まる文がいくつあるか数えてみてください。半分を超えていたら、書き換えの余地があります。
違い2:結論が先にある
紙の資料は最後まで読まれる前提で書けますが、Webは違います。読み手はいつでも離脱できる状態で読んでいます。
結論を先に置く型
- 結論:「保守は月5,000円から始められます」
- 理由:「更新作業とバックアップ確認に絞っているためです」
- 具体例:「月2回までの差し替えと、週次バックアップの確認が含まれます」
- 再度の結論と次の一歩:「まずは現状のサイトを見せてください」
背景説明から入りたくなる気持ちは分かりますが、背景は結論を読んだ人だけが読みます。順序を逆にするだけで、同じ内容でも反応が変わります。
読み手がどんな疑問を、どの順番で持つのかは「問い合わせが来ないLP」に共通する3つの構造的欠陥で詳しく整理しています。
違い3:形容詞ではなく、数字と固有名詞で書く
「豊富な実績」「迅速な対応」「高品質」。こうした言葉は、書いた側の主観でしかないため、読み手の判断材料になりません。
- 「豊富な実績」→「製造業を中心に年間200件」
- 「迅速な対応」→「平日午前の問い合わせは当日中に返信」
- 「幅広く対応」→「Webサイト・LP・SEO記事・採用ページ」
数字と固有名詞は、それ自体が検証可能であるという証拠になります。検証できる情報を書いている会社は、書けない会社より信用されます。裏を返せば、形容詞を並べるほど文章は軽くなります。
違い4:次の一歩が具体的に書いてある
文章の締めとしてよく使われる「お気軽にお問い合わせください」。これは行動を促しているようでいて、読み手に何も約束していません。押した先で何が起きるのか分からないため、心理的なハードルが残ったままです。
- 何をするのか:「現在のサイトを拝見して、改善点を優先順位つきでお伝えします」
- どれくらいかかるのか:「3営業日以内にお返事します」
- 費用は発生するのか:「診断とご提案までは無料です」
- 断れるのか:「ご提案内容にご納得いただけない場合、そこで終了で構いません」
この4点を書くだけで、同じボタンでも押される率が変わります。
やりすぎると、逆に削られる
一方で、行動させようとするあまり煽りに寄るのは逆効果です。「今だけ」「絶対に」「必ず成果が出ます」といった表現は、BtoBの読み手ほど警戒します。根拠のない効果の断定は、景品表示法の観点からも避けるべきです。
煽らずに動かすための材料は、事実の密度です。実績の数字、対応範囲、できないことの明示。特に「できないこと」を書いている文章は、それだけで信頼されます。信頼性そのものの積み上げ方は中小企業の信頼性を上げるコツにまとめています。
今日から直せるチェックリスト
- 「当社は」で始まる文が半分を超えていないか
- 結論が最初の3行以内に出てくるか
- 形容詞を、数字か固有名詞に置き換えられないか
- 問い合わせた後に何が起きるかが書いてあるか
- できないこと・向いていないケースを書いているか
- 断定と煽りに頼っていないか
長さは正義ではない
「SEOのために長く書く」という考え方が残っていますが、行動させる文章では逆に働くことがあります。読み手が必要としている答えが3行で済むなら、3行で書いたほうが動いてもらえます。
長さが必要になるのは、検討材料が多い高額なサービスや、判断に前提知識が要る場合だけです。文字数は目的ではなく、読み手の疑問を解消するために必要だった結果にすぎません。
判断の目安として、書き上げた原稿から段落を1つ削ってみて、意味が変わらないなら、その段落は最初から不要だったということになります。
書き始める前に決める2つのこと
いきなり書き出すと、途中で主語が自社に戻ります。先にこの2つを決めてください。
1つ目は、誰のどの場面の言葉かです。「製造業の総務担当が、社長から採用を何とかしろと言われた直後」まで具体化できると、使う語彙が自然に決まります。
2つ目は、読み終えた人に取ってほしい行動です。問い合わせなのか、資料を見ることなのか、電話なのか。行動が1つに定まっていない文章は、締めがぼやけます。
BtoBとBtoCでは、効く材料が違う
同じ「行動させる文章」でも、相手が法人か個人かで置くべき材料が変わります。
| BtoB | BtoC | |
|---|---|---|
| 判断する人 | 担当者+決裁者の複数 | 本人ひとり |
| 効く材料 | 実績・体制・稟議に使える資料 | 体験・共感・手軽さ |
| 避けたい表現 | 煽り・断定 | 専門用語の羅列 |
| 検討期間 | 数週間〜数か月 | 数分〜数日 |
BtoBで見落とされがちなのが、読み手が社内で説明する立場にあるという点です。担当者が上司に見せて通せる材料——費用の内訳、実施範囲、期間——が書かれていれば、それ自体が後押しになります。
社内で書くなら、現場の言葉を拾う
外注せず自社で書く場合、最も確実な方法は営業や現場が実際に使っている言葉を書き起こすことです。商談の受け答え、よく聞かれる質問、断られた理由。これらはすでに検証済みの、通じる言葉です。
きれいな日本語に整えようとするほど、抽象的で誰の言葉でもない文章になります。多少ぎこちなくても、現場の語彙のほうが届きます。
まとめ
行動させる文章は、文才ではなく設計です。主語を読み手に変え、結論を先に置き、形容詞を数字に替え、次の一歩を具体的に書く。この4点を機械的に適用するだけで、原稿は見違えます。
サイトやLPの原稿の書き起こし・リライトも承っています。既存の原稿を診断するところからでも構いませんので、お問い合わせよりご相談ください。